ユニークな表紙に惹かれて手に取った1冊。最初、この本を手に取った時は、「軽い読み物を読みたいな」くらいの気持ちでしたが、読み進めるうちに、ふと手が止まるような言葉がいくつも現れて、ページをめくる手がゆっくりになっていきました。
『レシート探訪 一枚に見る小さな生活史』は、雑貨店店主、会社員、農家など、さまざまな肩書きを持つ人々のレシートを入口に、その人の暮らしぶりや価値観、日々の想いを丁寧に紐解いていく一冊。2020年5月末から2023年1月末にかけて取材されたという背景もあり、すっかり過去のものになった「コロナ禍」の空気が、ところどころ言葉の端に立ちのぼってくるのも印象的でした。
なかでも心を掴まれたのが、「レシートを受け取る時、人は未来を見ている」という一節。レシートとは「買ったものの記録」としか見ていなかった私にとって、この視点は斬新でした。
たしかにレシートは購入を証明する紙きれかもしれない。だけどその瞬間、人は「その先への喜びや楽しみ」へと思いを巡らせている——未来の時間へと気持ちを向けている。
レシートを受け取る時、人は夢を見ている。
— 「レシート探訪 1枚にみる小さな生活史」より
思い返すと、自分にとってそれに近い感覚を抱くのが「旅の切符」です。電車の切符や飛行機、フェリーのチケット。乗り物に乗って、座席に腰を下ろした瞬間こそ、私の旅のなかで最も心が高揚する時間です。
まだ見ぬ景色や出会いに胸をふくらませるそのひとときは、写真にも残らないし、物として手元に残るわけでもない。それでも、切符や飛行機のチケットをあとから見返すと、そんな「これから旅が始まるぞ」というワクワクした気持ちが、鮮やかに立ち上がってくるのです。
レシート宿る、私の物語。あなたはレシートから、どんな物語を思い出しますか?
コメントを残す